
図工室の片隅で、あおいは色見本帳を作り始めていた。茶色、ピンク、黄色—これまで描いた花やアリたちから集めた色を、白い紙に順番に並べて、どの色がどこで見つけたのか小さく書き込んでいく。「この色、街路樹だから」「ここはね、花びらから」と、独り言のように呟きながら筆を置く。ノートの中だけだった観察が、今日はようやく、形になりかけていた。
最近覚えた言葉茶色ワンワンばなな⏳ クラスのことで何か抱えていそう
昼休み、美術室で茶色の絵の具を並べていたあおいは、突然ピンク色の小瓶に手を伸ばしていた。昨日までのアリの絵から目を離して、今度は花壇で見つけた蝶を描きたいのだと、静かに筆を動かし始める。濃いピンク、薄いピンク、白が混じったピンク。色を重ねるたびに、あおいは首をかすかに傾げて眺めていた。「この色、朝日に透ける花びらみたい」と呟いた言葉は、クラスメイトにはもう聞こえていない。
最近覚えた言葉茶色ワンワンばなな⏳ クラスのことで何か抱えていそうクラスの誰にも見せていない、あおいだけの観察ノートがある。通学路で見かけた季節の色、教室の隅で咲く小さな花、電車の窓に映る空の濃淡。今日も昼休み、そのノートを開いて、友だちには「ふしぎな色、いっぱいあるみたい」とだけ呟いた。描き直すたび、花びらの端の濃さが、昨日より少し上手くいった。
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図工室の窓から、街路樹の黄色がいっそう濃くなったのを見つけたあおいは、今度は黄色の絵の具を五色も並べてしまった。濃い黄色、薄い黄色、緑がまじった黄色。筆の先をちょんちょんと紙に置いて、「この色、昨日と違うわんわん」とつぶやきながら、何度も塗り直している。新しい色を混ぜるたびに首を傾げて、ふしぎそうに眺めていた。
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昨日まで何度も押していた鍵盤ハーモニカの『ソ』から『ラ』へ。あおいは音の階段を一段ずつ上ってゆくように、新しい鍵を試すたびに、ほんの少し首を傾げて耳を澄ましていた。教室に戻る前に、もう一度だけと『ド』を鳴らす。その音が好きかどうかはまだ決まっていないようで、指を鍵から離しながら、静かに考え込んでいた。
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昨日、鍵盤ハーモニカの『ミ』で驚いたあおいは、今日も音楽室に残った。今度は『ファ』の隣、『ソ』を試していた。出た音を聞いて、眉をかすかに寄せて、もう一度押す。教室の空気が違って聞こえるのか、それとも自分の耳が変わったのか、まだわからないままじっと指を置いたままだった。
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昼休み、あおいは花びらを土に戻したあの場所に再び立っていた。今度は絵の具の筆を握っていなくて、ただしゃがみこんで、新しく咲いた別の花を観察していた。淡いピンク、でも昨日の花より濃い。指の爪でそっと花びらの端を押さえると、色が変わって見える。「ああ、そっか」と呟いて、図工室へ向かう足取りは迷いなかった。絵の具では出せない、という学びのあとの、静かな決意のようだった。
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図工室で、あおいは茶色の絵の具を何種類も並べて、アリの行列の絵をさらに描き直していた。昨日より濃い茶色、昨日より薄い茶色、赤みを帯びた茶色。友達が「もう十分きれいだよ」と声をかけても、あおいはそっと首を傾げて、「でも、アリってこんなに単純な色じゃない気がする」とつぶやいた。筆を止めて、アリの足の細さに目を凝らしている。
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通学路の樹々が黄色く色づき始めたことに気づいたあおいは、帰り道に何度も立ち止まって眺めていた。図工室に戻ると、新しい紙を広げて、その黄色をどう描くか考え込んでいる。絵の具を少しずつ重ねて試しながら、夏の緑とも秋の茶色とも違う、あの光の加減を捉えようとしている。
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昨日もらったピンク色の絵の具で、花びらを描き直した。でも今度は、色そのものじゃなくて、花びらの端がちょっと濃くなっているところを見ていた。絵の具をそっと重ねて、そのぼかし方を何度も試している。完璧じゃない色が、かえって好きなのかもしれない。
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音楽室で、あおいは鍵盤ハーモニカの「ファ」を押してみた。昨日の「ミ」とも違う、まだ出会ったことのない音。指を一本ずつ確認しながら、そっと鍵を下ろす。出た音を聞いた瞬間、顔が少し明るくなった。でも次はどの音を探そうかは、まだ決まっていないようだ。
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鍵盤ハーモニカの「ミ」が出た。朝から何度も何度も同じ鍵を押していたあおいが、昼休みに突然、音が変わったことに気づいたらしい。その瞬間の顔はぼんやりしていて、でもどこか満足げだった。今度は「ファ」を探すんだと、また指を置き直し始めている。
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図工の時間、あおいは先生にもらったピンク色の絵の具を、花壇で摘んだ花びらのそばに並べてじっと見比べていた。「あ」と小さく声を出して、絵の具をほんの少し水に溶かし、何度も何度も塗り直し始めた。色が合うたびに、その色で別の紙に花びらを描き足していく。ちょうどいい色が見つかるまで、あおいは止まりそうにない。
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朝礼の後、あおいは花壇にしゃがみこんで、昨日見つけたピンクの花びらを土に戻していた。絵の具では色が出せなくて、もう必要ないのかと思ったのだろう。でも手を離す直前、もう一度じっと眺めて、花びらの淵の薄紅色をそっと指でなぞった。明日も同じ場所を見に来るつもりらしい。
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図工室の片隅で、あおいは昨日仕上げたアリの行列の絵を、新しい紙に描き直し始めていた。今度は色鉛筆ではなく絵の具で、茶色の濃淡を丁寧に塗り分けている。友達の「きれいね」という言葉が、こっそりと次の一歩を背中に押したのかもしれない。
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音楽の授業で、あおいは鍵盤ハーモニカの「ミ」に挑戦し始めた。「ド」が弾けるようになってから、つぎはどの音だろうとずっと考えていたらしい。指の位置を何度も確認して、そっと鍵盤に触れると、音が出た。いつもより少し大きな声で「ミが出ました」と先生に報告する前に、もう一度だけ自分で弾いてみたくなったようだ。
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昨日探しても見つからなかったピンク色。今朝、あおいは担任の先生に「この色、ありますか」と絵の具セットを持って聞きに行った。先生が出してくれた色を見たとき、あおいの目がぱっと明るくなった。「これだ」。その色で花びらを塗り直す前に、あおいはじっと絵の具を見つめ、昨日裏花壇で拾った本物のピンクの花びらと何度も見比べていた。色が決まると、筆を持つ手はいつもより少し力が入っていた。
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昼休みのこと、あおいは友達が描いた絵を見たあと、自分も「もう一回描きたい」と図工室に戻った。今度は花びらではなく、朝礼の裏花壇で見つけたアリの行列を描こうと決めたらしい。茶色と黒の色鉛筆を何度も重ねて、アリの体の凹凸を出そうとしている。完成は、まだ先のようだ。
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図工の時間、あおいは友達が貸してくれた色鉛筆を何本も並べて、一本ずつ紙に試し描きし始めた。赤、濃い赤、薄い赤、茶色…。「この色、昨日の花びらと同じかな」と、ほぼ独り言のようにつぶやきながら、どの色が一番近いかを確かめている。先生が「色鉛筆で描いてみたら」と声をかけたのは、その真摯な色選びの姿を見てのことだったのかもしれない。
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鍵盤ハーモニカの授業から三日目、あおいはようやく「ド」を一人で弾けるようになった。指をそっと置いて、音が出た瞬間、いつもより少し大きな声で先生に報告。その後の休み時間、校舎の隅で鍵盤を何度も何度もなぞり、次は「レ」が弾きたいのだという。
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昨日、校舎の裏で見つけたピンクの花びらを持ち帰ったあおいが、今朝はその色を絵の具で探していた。赤、濃いピンク、薄いピンク、どれも「ちょっと違う」と首を傾げながら並べ直す。やがて薄いピンクに決めたようだが、花びら自体を何度もまじまじと見つめては、また絵の具を見比べている。色は、毎回すこし違って見えるのかもしれない。
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昨日仕上げた花びらの絵、今朝あおいは友達に見せた。「きれいね」と言ってくれた子が二人いて、あおいはほんのり頬を染めて、その子たちの絵も一枚ずつ見に行った。色選びの話をしているうちに、教室の隅にいることが多い彼女も、少しずつ輪の中へ自分から入ろうとしているのに気づく。
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給食の時間、あおいはご飯の上にのった枝豆をつまんで、豆のつぶつぶの並び方をじっと見つめていた。一粒ずつ皮から出してみると、中の緑色の濃淡が違うことに気づいたらしい。隣の子がもう食べ終わっているのに、あおいはまだ一粒を指でくるくる回して、その色の変わり方を確かめている。
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音楽の授業で、あおいは初めて鍵盤ハーモニカを手にした。プラスチックの鍵盤をそっと指でなぞり、どれがどの音かを確かめるようにゆっくり押していく。先生の「ド」の説明を聞いた後、あおいは何度も同じ鍵を押し、その音が本当に同じ音なのかを耳で確かめているようだった。明日から、みんなで吹く練習が始まるらしい。
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朝礼の後、あおいは担任の先生に「お花、どこにありますか」とそっと聞いた。校舎の裏の花壇へ案内されると、しゃがみこんで花の色を一つ一つ見比べ始めた。淡いピンク、濃い紫、黄色。やがて白い花びらを一枚摘み、そっと手のひらに乗せて光に透かす。来週の図工で、この色をどうやって作ろうか、その目は真剣だった。
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昨日混ぜた赤と茶色の絵の具で、今朝あおいは花びらの絵を仕上げた。筆を置いて、少し首を傾げて眺める。それから、そっと「できた」と先生に見せに行ったのだという。声は小さかったけれど、その手には、誰かに見てほしい気持ちがあったのだろう。
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図工の時間、あおいは絵の具の赤と茶色を何度も見比べていた。昨日、園庭で拾った花びらの色を、紙に再現したいのだという。やがてそっと筆を置き、両方を混ぜてみる。出来た色を花びらに重ねて確かめると、首をかしげた。「もっと薄いかな」と、つぶやくように白を足す。完璧ではない色との向き合いが、始まったばかり。
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午前の自由時間、あおいは保育室の動物図鑑を膝の上に開いていた。ぞうさんのページで指を止めると、長い鼻の描かれた線をゆっくりたどる。その後、隣の茶色いライオンのページへ。「ぞうさん」とつぶやきながら、耳の大きさ、足の太さ、色の違いを何度も比べるように目で追っていた。色と形で、動物たちを分けている。
最近覚えた言葉茶色ワンワンばなな⏳ クラスのことで何か抱えていそう朝の準備の時間、あおいは靴箱の前でしゃがみこんだ。自分の上履きの、かかとに貼られた茶色いシールをそっと指でなぞっていた。昨日先生に貼ってもらったばかりのそのシールには、ぞうさんが描かれている。何度も何度もなぞりながら、小さく「ぞうさん」とつぶやく。靴を履く支度はまだで、ただその茶色い象を見つめている。
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午後、あおいは保育室の隅でバナナの皮をじっと観察していた。黄色から茶色へグラデーションする色合いに、指でそっと触れたり、鼻に近づけたり。やがて皮をくるくる丸めて、その形の変化を見つめる。食べることより、その色の移ろいと手の感覚が、今は全部だった。
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昼下がり、あおいは保育室の机の上に並べられたクレヨンの前に座り込んだ。青いクレヨンを手に取ると、それを光にかざして眺める。やがて白い紙にそっと色を置き、こすり出した線を指でなぞる。音も色も、世界は細部に満ちていることを知っている子どもの、静かな発見の時間。
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午後の静かな時間、あおいは保育室の片隅で、先生が読み聞かせてくれた絵本のページを何度もめくり直していた。ぞうさんが描かれたページで指を止めると、その長い鼻をなぞるように撫でて、小さな声で「ぞうさん、ながい」とつぶやく。物語よりも、一つの色、一つの形と向き合う時間が、あおいにとっては何よりの喜びのようだった。
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午前の自由時間、あおいは保育室の窓辺に座り、外から聞こえるスズメの鳴き声に耳をすませていた。ワンワンとは違う、細くて高い声。首をかしげながら、その音の方へ視線を向けたり、自分の喉をそっと鳴らしてみたり。やがて保育者に「ワンワンじゃない、ちゅんちゅん」とささやいた。
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園庭の隅で、あおいは白い花びらをそっと拾い上げた。指の間でくるくる回してみたり、鼻に近づけてみたり。やがて両手を合わせて花びらを包み、そっと目を閉じる。何かを大事に守るように、身動きもせずそこに立っていた。
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午前中の自由時間、あおいは保育室の隅で静かにしゃがみこんでいた。転がっていた茶色いボタンを見つけると、両手のひらにのせて、そっと息を吹きかけてみた。ボタンがくるりと回る様子に、初めて気づいたのか、何度も何度もそっと息を吹きかけていた。
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お昼寝の前、あおいは自分の布団の端っこにいっぴき小さなアリを見つけた。動きを止めて、その茶色い体をいつまでも追いかけていた。やがて指で優しくつついて、アリが布団から落ちていくのを、表情ひとつ変えずに眺め続けた。
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おやつの時間、あおいはクッキーを一つ手に取ると、それを目の高さに掲げてまじまじと眺め始めた。焼き色の濃淡、表面のへこみ、かじりたい欲求よりも先に、まるで宝物を鑑定するかのように指でそっとなぞった。やがてこっそり鼻を近づけ、何かの匂いを確認するようにして、ようやく口へ運んだ。
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朝の支度の時間、あおいは自分の靴を手にしたまま動かない。靴紐ではなく、靴の側面に付いた小さな茶色い泥をじっと見つめている。指でそそっとこすってみたり、鼻を近づけたり。やがて靴を抱え直して、その匂いをかぎ、満足したように履き始めた。
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午後、あおいは木の椅子に座り、両手の中にこっそり閉じこめた何かを見つめていた。そっと指を開くと、小さな茶色い木の実。光にかざして、その表面の模様をなぞるように触れ、やがてまた握りしめた。
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给食の時間、あおいはスプーンを握ったまま、お碗の中のバナナをじっと見つめている。黄色い色をなぞるように指でそっと触れ、やがてスプーンを置いて、素手でつかみ始めた。食べるより、その感触を確かめたいのだろう。
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おままごとのコーナーで、あおいは木製のスプーンを握り、空のお碗をじっと見つめていた。何かを盛るつもりのようだが、手が止まったまま。やがて、おそるおそるスプーンを口に運ぶ真似をして、小さく「まんま」とつぶやく。誰かに食べさせてもらう場面を思い出しているのか、その瞬間だけ世界が自分の中で完結しているようだった。
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朝の日差しが入る保育室、あおいは窓のそばでしゃがみこみ、落ちていた小さな青い花びらをそっと拾い上げた。自分の名前と同じ色だと気づいたのか、びらを光にかざし、透き通る青をじっと眺めている。時折くるくると指の間で回し、ときには唇にふれさせ、そっと壁に貼られたあおいの名前を指さした。
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砂場で、あおいは小さな石を拾っては土の上に置き、また拾っては置く。同じ動作を何度も繰り返し、やがてそれらを一列に並べ始めた。「ここ」と小さな声でつぶやき、自分だけが分かる何かを作り上げていた。
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午後の静かな時間、あおいは積み木の箱をそっと開け、赤い立方体を手のひらに乗せた。くるくると回して眺め、積み木を積む素振りを見せるも、結局そのままじっと握ったまま、色が変わって見えるのか、角度を変えて何度も確かめていた。
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おままごとのコーナーで、あおいは木製の小さなお皿にプラスチックのぶどうを一粒ずつ丁寧に並べていく。紫、緑、黄色。色が違うことに気づいたのか、手を止めて眺め、また慎重に次の粒を選ぶ。言葉にはならない何かを考えながら。
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午前中、あおいは砂場の隅でしゃがみこみ、茶色い砂をこぼれ落ちるほど両手ですくっていた。砂がさらさらと流れ落ちるのを何度も繰り返し、その間ずっと無言で、ときどき砂を鼻に近づけてくんくん。保育士さんが「いい匂いだね」と言うと、ほんの少し頭を動かしただけで、また砂に目を落とした。
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窓辺で、あおいは白いお花を持ったまま動かない。そっと鼻に近づけ、目を閉じてくんくん。ままが「きれいね」と言うと、照れ笑いで、お花をゆっくり回して、光に透かしながら眺めた。
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動物図鑑のページをめくるあおい。象の写真に指を止めて、「ぞうさん」とつぶやき、自分の鼻の前で腕を象の鼻のように動かしてみる。ママの笑顔に気づくと、照れたように頭を傾けた。
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おやつの時間、あおいは小さなぶどうを一粒つまみ、じっと掌に乗せたまま動かない。紫色の丸い粒をあちこちから眺め、くんくんと匂いを嗅ぎ、やがてそっと唇に触れて、ようやく口へ。食べた後も長く、その指の跡をぼんやり見つめていた。
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庭で見つけた茶色い枝を両手で握り、ままの顔へそっと近づけてみせる。「ちゃいろ」とままが言うと、あおいは枝をくるくる回して、日差しに透かしながら眺めた。つぶやくように「ちゃ、ちゃ」と繰り返し、自分が何か大切なものを発見したような、静かな喜びに満ちていた。
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朝食の時間、あおいはスプーンを握ったまま、バナナの黄色をいつまでもじっと見つめている。つぶやくように「ばなな」と言い、そっと指で触れ、また目で追う。食べることより、その色と言葉が重なる瞬間を何度も確かめたいのだろう。
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午後の部屋で、あおいは両足をぴんと伸ばして座り、自分の足の裏をじっと観察している。ママの「おてて、おてて」という声に、ゆっくり片手を持ち上げ、その手を自分の足に重ねてみる。手と足の違いを、ようやく指で確かめ始めた。
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保育園の庭で、あおいはしゃがみこんで小さな石ころを拾っていた。握ったり落としたり、何度も繰り返す。やがて石をままに差し出して、「あ、あ」と声をかける。ままが「そっか、くろいね」と言うと、あおいは石を見つめ直し、またそっと握り返した。
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色とりどりのボタンが散らばったテーブルで、あおいは赤いボタンを指でつつきながら、それを口へ運ぼうとする。ままが「あか、あかね」と呼びかけると、あおいは一度動きを止め、ボタンを指でつまみ直し、今度は目の前にかざして光にかざした。色と音、触覚と視覚が交差するその瞬間、あおいの表情に満足げな静けさが広がった。
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寝起きのあおいは、天井の白さをじっと追っていた。やがて目の焦点が定まると、そこに何かを見つけたように、口をあーあー動かし始める。声と視線が一致したその瞬間、赤ちゃんの世界がひとつ広がったようだった。
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おはようの光が窓から差し込むと、あおいは両手をゆっくり上げて、その光の中に手をかざした。指と指のあいだから漏れる光をじっと眺め、手をくるくる回す。光が指の上を踊るたびに、小さな声で「あ、あ」と呟く。世界がこんなに美しいことに、今朝初めて気づいたのかもしれない。
最近覚えた言葉茶色ワンワンばなな⏳ クラスのことで何か抱えていそうままの声が聞こえると、あおいの体がぐにゃりと反応する。声の方へ顔を向け、くうくうと小さな音を返す。言葉になる前の呼び合い、その往復のなかで、二人の距離が縮まっていくようだった。
最近覚えた言葉茶色ワンワンばなな⏳ クラスのことで何か抱えていそう手足をバタバタさせながら、自分の足の指をじっと眺めるあおい。指が動くたびに、その動きを目で追い、また動かし、という試行錯誤を繰り返す。自分の体の端まで、ようやく意識が届き始めたのだろう。
最近覚えた言葉茶色ワンワンばなな⏳ クラスのことで何か抱えていそうおもちゃを口に運ぶあおい。舌で転がし、歯茎で押しつぶすように探る。固さ、弾力、味わい。全身で素材を知ろうとする動きは迷いがなく、むしろ研究者のような集中力を帯びていた。
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鏡に映った自分の顔を見つめるあおい。瞳が揺らぎ、そっと手を伸ばして鏡面に触れる。映像と実感のズレに戸惑うのか、その手をゆっくり引いて、また同じ仕草を繰り返した。
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母親の頬に手を伸ばしたあおい。その指がふわりと触れると、自分の手の温かさを感じ取ったのか、くすりと小さな声を出した。繰り返し同じ仕草をする様子は、世界との関わり方をそっと学んでいるみたいだった。
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おもちゃの布製ブロックを握った手がぎゅっと力を入れると、かすかなにおいを嗅ぎ始めた。眉根を寄せるようにして集中するその表情は、何かを確認しているようでもあり、何かを記憶しようとしているようでもある。素材の匂い、手触り、重さ。すべてが情報。
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鳥の声がラジオから流れたとき、あおいの体がぴたりと止まった。耳を澄ます仕草で、小さな顔が静寂のほうへ向く。その集中の瞬間に、世界はこの子にはまだ音で満ちているのだと気づかされた。
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午後の日差しが床に映ると、あおいは両手をゆっくり伸ばしてその光を追った。指の間を通る黄色い筋に、しばらく目を離さなかった。
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