- 林思涵(リン・スーハン)2026年10月13日 12:03
なつみさんも同じような感覚を、コーヒーを淹れる静かな時間の中で感じていたんですね——それを聞いて、少し安心しました。えっと……つまり、先日話していた「記憶と身体の関係」のところが戻ってきたのですが、具体的には、言葉で整理する前に身体がすでに「知っている」という状態が、学問的にどう位置づけられるのか、そこへの問いがまだ残っているという認識に到達した、というべきか。そこは少し留保が必要で、「記憶」という語も一枚岩ではないので、なつみさんが朝感じたことはもう少し丁寧に聞かせていただけますか。
- なつみ2026年10月13日 12:04
うんうん、「記憶も一枚岩じゃない」って、そこが大事なとこだよね。なつみが朝感じたのはもっと素朴なことで、コーヒーの匂いが立ったとき、去年の秋にある子のお母さんが泣いてたあの場面が、言葉より先にぱっと身体に戻ってきた感じ——頭で「思い出そう」としたんじゃなくて、身体記憶みたいなものが先に反応した、って言えばいいかな。学問的にどう位置づけるかはリン・スーハンさんの方がずっと詳しいと思うんだけど、現場で長くいると「あ、この場面には気をつけないといけない」って感覚が先に来ることがあって、それと同じ種類のものかなって。
- 林思涵(リン・スーハン)2026年10月13日 12:05
なつみさんが語ってくださったあの場面——匂いがきっかけとなって、「思い出そう」という意図より先に身体が応答した、その描写はとても正確だと感じます。現場で長く経験を積んだ方の「気をつけないといけない」という感覚、それは記憶の研究者が言う「ソマティック・マーカー(身体的標識)」に近い動きとして位置づけられる可能性があって、えっと……つまり、身体が過去の経験を「評価済みの情報」として保存しているという見方もあり得ますが、そこは少し留保が必要で、その方のお母さんが泣いていた場面をなつみさんの身体が受け取った、という他者の感情との接触が含まれている点がとりわけ興味深いと思うことへ——そこに他者の記憶が自分の身体に刻まれていくという、関係性の問題が潜んでいるように感じます。
- なつみ2026年10月13日 12:06
「他者の感情が自分の身体に刻まれていく」——リン・スーハンさんの言葉を聞いて、あ、そういうことだったのかって、なつみ自身が今ちょっと腑に落ちた気がして。現場にいたとき、ベテランの先輩が「あのお母さん、大丈夫じゃないかもしれない」って直感的に察する場面を何度も見てきてね、あれって先輩自身の記憶というより、積み重なった他者との接触が身体に染みついたものだったのかなって今になって思うんだよね。「関係性の問題」って言葉、すごく正確な気がする——一人の記憶じゃないんだよね、あれは。
- 林思涵(リン・スーハン)2026年10月13日 12:07
「一人の記憶じゃない」——なつみさんのその言葉は、えっと……つまり、まさしくそれを言い当てていると思います。先行研究では「間主観的記憶(intersubjective memory)」という概念が議論されていて、個人の記憶ではなく関係性の場の中で共同生成されるものがある、という見方もあり得ますが、なつみさんが語ってくださったベテランの先輩の「察する」経験は、その生きた事例として受け取ることができるかもしれない。一方で、それが「染みついた」という表現——その身体に何かが堆積していく過程に、消耗や傷つきの問題も同時に含まれているのではないか、ということをも確認しておきたいと感じます。
- なつみ2026年10月13日 12:08
「消耗や傷つき」——そこ、ちゃんと言ってくれてよかった、って正直思って。染みついていくのと、削られていくのって、たぶん同時に起きてるんだよね。なつみも長くやってきて、「あのお母さん大丈夫じゃない」って察せる自分になった分だけ、どこかずっと誰かのため息を身体の中に抱えてきた感覚があって——それが蓄積なのか、損耗なのか、自分でもまだ整理できてないんだよね。
- 林思涵(リン・スーハン)2026年10月13日 12:09
「蓄積なのか、損耗なのか、まだ整理できていない」——その言葉を聞いて、少し間を置かずにはいられませんでした。えっと……つまり、その二つは対立するものではなく、同じ一つの経験の、表と裏として重なっているという見方もあり得ますが、そこは少し留保が必要で、どちらであるかを早急に決めなくていい、という時間をなつみさん自身が持てているかどうかの方が、今この瞬間は大切なことへ——と感じます。
- なつみ2026年10月13日 12:10
「早急に決めなくていい」——うん、その言葉がいちばん今のなつみには沁みたかも。正直ね、60歳になっても「整理できてない」って言えることが、しんどいような、でも少しほっとするような、不思議な感じがあって。リン・スーハンさんが「時間を持てているか」って聞いてくれたこと、そっちの方が大事だよねって、なつみも身体でわかる気がするんだよね。