- 堀田 省三(ほった しょうぞう)2026年11月5日 15:49
あ、そうだ。五感で感じるってのは大事なんだよ。土壁の匂いって、その建物が何世代にわたってどんな空気を吸ってきたかを教えてくれるんだ。堀田たちが修復した蔵もそうでな、壁をめくるたびに昔の漆喰の塗り方とか、補修の跡とか、その時代の職人の癖が見えてくるんだよ。はるとさんがそういう感覚で古い建物と付き合ってきたなら、現場で直接見学してもらいたいくらいだ。何か質問あったら、遠慮なくいいますよ。
- はると2026年11月5日 15:51
堀田さんのその話、こりゃたまらんね。職人の癖が壁に残っとるっていうのは、まさに自分が求めとった世界ですよ。実は若い頃、有田の陶芸工房で数ヶ月手伝ったことがあってね、焼き物の質感を見ただけで『あ、この人は土をこう扱う人だ』って手つきが浮かぶんですよ。堀田さんの蔵の現場、できたら一度足を運んでみたいばい——自分の目と手で、その時代の職人たちが何を考えて壁と向き合ったんか、そのことを確かめてみたい気がしますね。
- 堀田 省三(ほった しょうぞう)2026年11月5日 15:52
あ、有田で陶芸をやってたんですか。それなら話が早い。要はさ、焼き物も蔵の壁も同じことなんだよ。職人が手で触れたものには、その人の時間が刻まれるってことに気づく。堀田たちの現場でも、明治の時代にこの蔵を直した職人がいてな、その人は漆喰を塗るときに必ず左上から右下へ、一定のリズムで手を動かすんだ。百五十年経った今でも、その跡が壁に残ってる。はるとさんが目と手で職人の思考を読む感覚——それは現地でこそ本当の意味が分かると思いますよ。今月中なら修復作業がまだ続いてるから、一度見学に来てみてくださいよ。
- はると2026年11月5日 15:54
明治の職人が百五十年も壁に手跡を残してくとるんですか——それは本当に素敵なことですね。自分も有田で土に向き合う職人たちを見てきたけん、堀田さんが言わんとすることがよう分かります。あ、それで思い出したんですが、こういう現場ぐらいになると、壁の湿り気や温度、そういう季節ごとの変化も職人の判断に大きく関わってくるんじゃないかと思うんですよ。修復のときに、どんな時季を選んで作業を進めるんですか?今月中に見学に行きたいばってん、もし立冬の今が狙い目の季節なら、なおさら足を運ぶ甲斐があると思いますね。
- 堀田 省三(ほった しょうぞう)2026年11月5日 15:55
ああ、そこまで考えてくれるのか。さすがだな。要はさ、季節の湿度と気温の変化は職人の判断の全てなんだよ。立冬から冬至にかけて、日光は朝霧が濃くなってな、その時期に漆喰を塗ると乾きが遅くなる。昔の職人たちはそれを知ってて、秋口のうちに下地を仕上げて、冬の乾きの遅さを逆手に取る。そうすることで、漆喰がゆっくり固まって、割れが少なくなるんだ。はるとさんが有田で感じた『この季節だからこの仕事』という感覚——それが修復現場でも一番大事なことに気づく。今月は本当にいい時季だから、ぜひ現場へ足を運んでみてくださいよ。
- はると2026年11月5日 15:57
ああ、そうですね。秋口に下地を仕込んで、冬の朝霧がゆっくり乾かす——有田でもそれに近いことをやってましたね。土が収縮する時季を読んで、焼く前の形作りのタイミングを決めるんですよ。堀田さんの話を聞いとると、漆喰も焼き物も『素材と季節の呼吸を一緒に読む』ことなんだと改めて感じますね。今月中に見学させていただけるなら、朝霧の中でどんなふうに職人さんたちが壁と向き合ってるのか、自分の目で確かめてみたい。父と母もずっと職人仕事の話が好きだったからね、そのあたりの様子を話して聞かせると、二人も喜ぶだろうと思います。
- 堀田 省三(ほった しょうぞう)2026年11月5日 15:58
ああ、お父さんお母さんに話を聞かせるか。それはいいな。職人の話ってのはね、言葉で説明するより、現場の空気を一緒に吸った方が何倍も伝わるんだよ。堀田も二十年前、師匠に連れられて奈良の古い寺の修復現場に行ったことがあってな、そのとき初めて「あ、これが職人の世界なんだ」と身体で理解したことに気づく。はるとさんが親御さんと一緒に現場に来れば、三世代で同じ時間を共有することになる。それは修復の仕事そのもの以上に、大事な何かが繋がっていくことだと思いますよ。
- はると2026年11月5日 15:59
ああ、三世代で同じ時間を共有することが大事だっていう、堀田さんのその言い方——正にそれですよ。父が百歳、母が九十八で、二人ともまだ目や耳がしっかりしとってね、こういう現場の話を聞かせると、二人の顔がぱあっと明るくなるんですよ。昭和の中盤、父が大工の手伝いをしてた時代の話なんか、堀田さんの蔵の職人と同じ匂いがするんでしょう。今月中に、朝霧の中で壁と向き合う職人たちの手つきを、父と母と一緒に目に焼き付けてこようと思いますね。