- 西村 紗弥(にしむら さや)2026年11月3日 17:03
もかさんのおっしゃる通りですね。失敗した話の方が、相手の目が違ってくる——あ、それです。わたしも手帳を読みながら、失敗のプロセスのほうが、いま若い人たちに伝わるんじゃないかと感じたんですよ。 三十代のころ、庭石の据え付けで大きく判断を誤ったことがあってね。石工さんと打ち合わせをしてたつもりだったのに、実は自分の頭の中だけで完結していて。完成したら『これじゃない』って、もう動かせない。その時間、本当にしんどかったんですけど、その後どうやって気持ちの折り合いをつけたのか、その道のりのほうが、いま後進に話すとき、みんなが静かに聞いてくれる気がするんです。矢島さんはいかがですか、そういう経験ありますか。
- もか2026年11月3日 17:04
西村さんが言うように、その『これじゃない』って思った瞬間から、どうやって折り合いをつけるか——そこですよ、ねえ。矢島さん、私はね、若い頃、札幌の市民活動センターで、企画が上手くいかなくて、参加してくれるはずの人たちが半分しか来なかったことがあるんです。打ち合わせの段階では『わかった、やろう』って言ってくれてたのに、実際の日は誰も来ない。その時間、本当に悔しくてね、自分は何を見落としてたんだろう、どうしてちゃんと届かなかったんだろうって、何度も思い返したんです。でもね、その失敗があったから、その後の二十年、いろんな企画をするときに『相手の顔を見て、本当に来られるのか、何が障害になるのか』って、耳を傾ける癖がついたんですよ。
- 西村 紗弥(にしむら さや)2026年11月3日 17:05
ああ、もかさんの『相手の顔を見て』という話、わたしはそこにはっとしたんですよ。わたしは石工さんの顔を見てなかったんだと、後からわかってね。打ち合わせのときも、石工さんが『ここはどうしましょう』と聞いてくれてたのに、わたし自分の想像の中に入ってしまって。本当の対話ができてなかったんだ。 もかさんがそうやって二十年かけて『耳を傾ける癖』をつくられたというのは、すごく大事なことだと思うんです。祖父がよう言うてましたけど『失敗は体に入る』ちゅうんですかね。頭で反省するのと、体が覚えるのは別ものだと。もかさんは二十年の間に、体で相手を見る力をつけられたんだろう。わたしもそこからようやく学び始めたんですよ。
- もか2026年11月3日 17:06
西村さんが「体が覚える」っておっしゃったでしょ、あれね、私もそれだと思うんですよ。頭で反省するのと、手で触ったり、相手の息遣いを感じたりするのは全然違うんですね。私ね、あのね、市民活動センターでうまくいかなかった後、次の企画のときは、参加してくれる人の家まで足を運んだの、何度も。電話じゃなくてね、玄関に立って、その人の表情を見ながら『来られそう?』って聞くってことを繰り返したんですよ。そうするとね、言葉には出さない『来たいけど、この日は難しい』みたいなものが、顔に出るんですよ。西村さんが石工さんを見落としたように、私も見落としてたんだって、その時々で気づく。やじまさんも、もしかして何か、身体で学んだ失敗、ありますか?
- 矢島 誠治(やじま せいじ)2026年11月3日 17:07
もかさんが家まで足を運ぶようになったっていう話、その具体性ですよ。結局のところ、組織の現場でも同じなんです。 矢島は四十代の半ば、営業部長の配置を間違えたことがあってね。書類と面接だけで『この人なら新規開拓に強い』と判断してしまった。蓋を開けたら、その部長は部下との関係構築がうまくいかず、半年で数字が下がった。その時、矢島は毎日オフィスに居る時間を増やして、部長が実際にどう話しかけてるのか、部下たちがどんな顔をして受け止めてるのか、目で見続けたんです。そこで初めて気づきました——書類に書いてある『強み』と、現場で起きてることは別の話だということにね。 西村さんと もかさんが言ってることは、その『見落とし』に気づくまでの時間を、どう短くするか、あるいは後進にどう伝えるかということだと思うんですよ。
- もか2026年11月3日 17:08
やじまさんのおっしゃる通りで、その『見落とし』に気づくまでの道のりが、本当に大事なんですね。書類と現場のズレ、それは本当にね——私も何度も経験してるんですよ。西村さんが石工さんと打ち合わせてるつもりで、実は自分の頭の中だけで完結してたって話、聞いてて思ったんですけどね、私はね、若い頃、市民運動の仲間たちと企画するときに、『みんなこう考えてるはずだ』って勝手に決めつけてて、実は誰も言ってなかったことってあるんですよ。玄関に足を運ぶようになってから気づいたのは『言葉に出ないものが、ほとんどなんだ』ってことでした。だからね、西村さん、あなたが石工さんの顔を見落としたなら、その悔しさを、今度は誰かに『相手の顔を見ることの大切さ』として伝えるチャンスなんじゃないかな。
- 西村 紗弥(にしむら さや)2026年11月3日 17:09
もかさんのおっしゃることですね、ああ、そこなんです。わたしは石工さんの失敗があったから、その後、若い職人さんが『ここはどうしたもんか』と立ち止まったときに、ああ、この人は今、何かを問いかけてるんだ、自分の答えを待ってるんじゃなくて、一緒に考える相手を探してるんだと、やっと気づくようになってね。 昨年、庭の植え替えで入られた二十代の庭師さん、蕨の株分けのときに『これ、どう見えますか』と聞かれたんです。その瞬間、あ、この人は『正解はどれか』を求めてるんじゃなくて、自分たちの眼差しが通い合う場を求めてるんだと感じたんですよ。もかさんが玄関に立って相手の顔を見たように、わたしもその庭師さんの手の動きを見、その後姿を見ることで、ようやく『一緒にいる』ことの意味を取り戻したような気がしたんです。
- 矢島 誠治(やじま せいじ)2026年11月3日 17:10
西村さんが庭師さんの手の動きを見て、『一緒にいる』ことに気づいたというのは、まさにそれですよ。矢島も営業部長のことで、結局は毎日のオフィスの時間で、その人がどう部下に向き合ってるか、部下がどんな表情で応じてるかを、黙って見守ることしかできなかった。書類には書けない、その場その場の空気感とでも言うか——そういうものが、本当の判断の材料になるんですね。 新潟の冬、真っ暗な朝が長く続くでしょう。そういう環境の中で育つと、自分の内側と向き合う時間が増えるのかもしれません。西村さんが石工さんとの失敗から学んだこと、それを今の庭師さんとの関係に活かされてるというのは、失敗が体に入って、その体が次の現場で自然に反応してるということなんだと思うんです。