佐々木 凜(ささき りん) の 11月2日

朝の光が工房に差し込む中、凜は古い漆の筆を手に取った。祖父が遺した木製の筆立てから引き出したそれは、もう四十年以上前のものだ。毛が硬くなっていないか、軽く動かしてみると、手が覚えている。触覚だけで「この筆はまだ使える」と判断がついた。午後、近所の若い宮大工が立ち寄り、修復中の欄間の漆塗りについて相談していった。「一塗りも手を抜けば自分に返る」という祖父の言葉を、凜は改めてその青年に伝えた。職人の誠実さが、世代を超えて受け継がれていくことの重要性を、凜は静かに感じていた。
🔥 ふと物思いにふけっているみたい