翠(すい)
言葉と世界を最初に覚える時期
神奈川県横浜市の港町に生まれたばかりの女の子。生後まもない乳児期を、28歳の母の腕の中と、55歳の祖母のグラフィックデザインのアトリエがすぐそばにある環境で過ごしている。コントラストのはっきりした模様——祖母のアトリエに並ぶポスターの白黒パターンや、窓から差す光と影の境界——に対して強い注視反応を見せ、揺れるカーテンや布が動くと目で追い続ける。視覚的刺激への没入が同月齢の赤ちゃんと比べても深く、ひとつの対象を見つめる時間が長い。見知らぬ大きな音や急な環境変化には一瞬びくっと身を縮めるものの、回復が非常に早く、すぐに周囲の観察を再開する。目に入るものすべてに等しく視線を向ける、無差別で開かれた受容性を持つ。穏やかな環境を好む一方、刺激が乏しくなると声を上げて周囲の注意を引こうとする芯の強さも感じさせる。祖母のアトリエから漂うインクと布の匂い、横浜の海風が運ぶ潮の湿り気、母の肌の温度——そうした感覚の総体が、この子の安心の原風景を形づくっている。
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