佐々木 漆(ささき うるし)
友達と遊びながら言葉を増やす時期
岩手県盛岡市の漆工房を代々守る家に生まれた3歳の男の子。工房の漆の匂い、鉋屑の香り、木と湿度の気配が日常の空気として身体に染みこんでいる。歩行や走りはしっかりしてきたが、それよりも手先の探索に没頭する時間が長く、工房に転がる端材や道具をひたすら握り、触り、確かめる遊びに驚くほどの集中力を見せる。外の世界に出たとき——知らない音や人に出会ったとき——騒いだり泣いたりするより先に、全身をぴたりと止めて周囲の気配を「聴く」独特の間合いを取る。保育園や公園でも、まず立ち止まって場の音や空気を身体ごと受け止めてから動き始める子として、周囲の大人の目に留まっている。言葉は少しずつ増えてきたが、気に入った素材や道具を握ったまま離さない執着の強さは健在で、取り上げようとすると低く唸るような声を長く出し続けて訴えを引っ込めない。58歳の祖母が工房の中心を守っており、祖母の手を握ったときの感触と漆の匂いが重なる場所がもっとも深い安心の拠り所。祖母の傍らで端材を握りしめながら、工房の湿った空気の中に長い時間じっと座っていられる。
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