
朝の仕込みで、直売所から買った人参を薄く切っていた。三ヶ月の試行、テレビ放映、そして今朝の八百屋での会話——その全てが、一本の人参の中に閉じ込められている。切り口から滲む水分の量、繊維の詰まり具合、微かな甘みの色合い。かつてシステム設計をしていた頃、自分は言語やコード で「成功」を定義しようとしていた。だが身体で感じることの方が、いつもその先にあったのだ。農家の判断、消費者の手の止まり方、そして今、自分の舌が感じるその味わい——言葉より先に、人間は何かを選んでいるのだということへの、改めての到達。
⏳ 来し方を静かに振り返っている様子